平成27年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書 「物理課題探求Ⅰ・Ⅱ」

2017.01.31

科目名 物理課題探求Ⅰ・Ⅱ
担当教員 細田真妃子・石井聡・井上真・小田垣孝・仲光邦明・本橋章

Q1 PBLを導入した意図・目的

与えられた問題を考え、解決法を学び、それらを計画・実行するという研究の実践的体験を通して、即戦力となる人材を育成する。単なる座学だけでなく明確なプロセスを体験させることを目的とする。 また、前履修者の踏襲とならないよう、積極的に新しいサンプルや手法を取り入れ、学生に自ら調べ考える努力を促す。
物理学課題探求Iでは数値計算を主とし、物理学課題探求IIでは実験を主とする。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

学生それぞれが異なったテーマに取り組み、自ら課題の背景の調査、実験法・計算手法の調査、それに基づいた実験・計算を実行する。 学生はテーマごとに2-3名のグループをつくり、グループ内の討論と教員との議論を通して理解を深め、問題解決の手順や方法を学ばせた。
【物理学課題探求I】
講義の初期に論文考究を行い、現在進行中の研究テーマを取り上げ、実際の研究に取り組ませる。 今年度のテーマは凝集ポテンシャルを持つ定常シュレディンガー方程式、多粒子系の振動、ロトカ・ボルテラ方程式、DLAフラクタル、ランダムウオーク
【物理学課題探求II】
超伝導体の作成および物性評価を目的とする。イットリウム系超伝導体の作成において、YBCOのY(レアサイト)を班で検討したうえで何を用いるか任せた。作成ののち、X線回折による構造決定、電気伝導度、ESR測定も行い、総合的な判断を要求した。

Q3 授業における成績評価方法

この授業では中間報告も含め、15回のうち3回プレゼンテーションを行った。グループごとに発表を作成し、それを分担して口頭で発表させることにより、すべての学生に発表を実践させた。 評価については、それぞれのテーマについて50点満点とし、主にプレゼンテーション、およびレポートにより評価を行った。テーマの担当教員だけでなく、全教員で評価を行う。

Q4 学習成果の可視化の取組み

課題探求Iについては、履修学生が2年生のためプレゼンテーションは基礎から指導する必要があったが、最終発表前に中間報告が2回あったため十分行えた。最終発表についてはデータの解析などについての指導は行ったがプレゼンテーションについての指導は一切せずにすんだ。
課題探求IIについてはIが履修済みの学生ということもあり、プレゼンテーション、チームワークなどあえて指導はせず、学生の自主性に任せたが放課後や週末にディスカッションの時間をとったり、メールで連絡を密に取り合うなどしっかりできていたようである。

Q5 PBLを発展させるための課題

① 課題探求Iの開講期が2年次であるため基礎知識の習得に時間が足りないという問題がある。そのため「課題探求」へ移行するのがあわただしく、結果が思わしくない班もあった。
② 課題探求Iは学生それぞれに異なったテーマを与えて個別に指導しているため、教員数が不足している。副手やSAを相当数採用できる予算措置が必要である。

Q6 授業の概要と進め方

【課題探求I】
第1 班分け、課題の説明、各課題の読むべき論文/教科書のリスト 数値計算の基本的事項の講義・演習
第2 数値計算の基本的事項の講義・演習
第3 課題論文考究発表
第4 開発環境体験 開発環境体験、プログラミング実習
第5 プログラミング実習
第6 モンテカルロ法課題
第7 モンテカルロ法課題
第8 モンテカルロ法課題
第9 モンテカルロ法課題/中間発表準備 中間発表準備
第10 中間発表/後半の課題論文考究発表
第11 モンテカルロ法課題
第12 モンテカルロ法課題
第13 モンテカルロ法課題
第14 発表の準備
第15 発表会
【課題探求II】
第1 班分け、課題の説明、各課題の読むべき論文/教科書のリスト 超伝導現象の基本的事項の講義・演習
第2 論文考究
第3 課題論文考究発表
第4 超伝導体作製(仮焼き)
第5 超伝導体作製(本焼き)
第6 超伝導体加工
第7 XRD講義
第8 XRD実験
第9 構造解析発表
第10 電気伝導率測定
第11 ESR測定
第12 実験予備日(再実験)
第13 データ解析
第14 発表の準備
第15 発表会

〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。