2021.06.22
報道関係各位
学校法人東京電機大学
東京電機大学(学長 射場本忠彦)の村松和明教授(理工学部 生命科学系)の研究テーマ「抗炎症活性をもつ分解制御型ヒアルロン酸誘導体をベースとした注入型癒着防止剤の開発」が、このたび慶應義塾大学拠点によって令和3年度に研究支援が行われる「研究シーズ(シーズA)」に採択されました。同拠点は、日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「橋渡し研究戦略的推進プログラム」の研究支援拠点の1つであり、首都圏の私立大学を中心に大学・研究機関の研究シーズの臨床応用に向けた支援に力を入れています。
橋渡し研究支援事業は、研究シーズを研究のステージ・進捗状況に合わせて分類された「3つの段階」(シーズA・B・C)※1に加え、医学・歯学・薬学系以外の先端技術・知識を利活用して医療イノベーションを推進することを目的とした異分野融合型研究シーズ※2に分類され支援されています。このたび村松教授が採択された「研究シーズ」は、一昨年・昨年と2年間にわたり異分野融合型研究シーズとして採択され※3支援を受けてきましたが、今年度はシーズAにステージアップしての採択となり、これから特許出願を目指し実用化に向けた研究を行っていきます。
※1:
『研究シーズの段階について』(慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター 公式ホームページより)
・シーズA…関連特許出願を目指す基礎研究課題
・シーズB…非臨床POC取得及び治験届出を目指す課題
・シーズC…治験又は高度・先進医療等を実施し、臨床POC取得を目指す課題
※2:
『異分野融合型研究シーズ』は、令和元年度に開始された異分野融合型研究開発推進支援事業で支援する研究シーズ。医歯薬系分野以外の研究者の有する先端技術・知識を利活用し革新的な基礎研究の成果を臨床研究・実用化へ効率的に橋渡しすることを目的とし、医療シーズに繋がる可能性のある要素技術・先端技術等の研究シーズを指す。
※3:
令和2年度 採択研究テーマ「ヒアルロン酸誘導体で処理された間葉系幹細胞を利用した免疫寛容誘導法の開発」
令和元年度 採択研究テーマ「生理活性の持続性に優れた新規なヒアルロン酸誘導体を活用した関節機能改善剤の開発」
[研究テーマ]
抗炎症活性をもつ分解制御型ヒアルロン酸誘導体をベースとした注入型癒着防止剤の開発
[研究概要]
開腹手術では、術後に臓器癒着が生じる恐れがある。その防止のため、従来から臓器間を物理的に隔離するシート式癒着防止材が活用されてきたが、「張り直しが利きにくい」「生体内での耐久性が乏しい」「内視鏡手術に適さない」などの課題がある。また最近では、腹腔鏡手術にも対応できるスプレー式の癒着防止材も商品化されたが、使用直前にセットアップ作業を要するなど簡便性の観点で改善の余地がある。よって、癒着防止効果と生体適合性を両立し、腹腔鏡手術に際して簡便に使えるインジェクタブル型(注入型)の癒着防止材の開発が求められている。
村松教授はこれまで、高分子量ヒアルロン酸(HA)の生理活性を医学に利用する研究に取り組んできた。その過程で、高分子量HA誘導体「ポリグルタミン酸グラフト化ヒアルロン酸(PGA-g-HA)」を開発し、同素材が注入型の癒着防止材に利用できる可能性を見いだした。本研究課題では、前述した現行の癒着防止材が抱える課題を解決するため、PGA-g-HAを活用し、機能性(癒着防止効果)、生体適合性、安全性、操作性、利便性に優れた癒着防止材の開発を目指す。
本研究課題の実用化により、開腹手術や腹腔鏡手術などの術後における臓器癒着の防止や消化管イレウス(腸閉塞)などの発生の予防につながり、その結果として再手術頻度の低減、再手術時の手術難度の軽減も期待できる。さらには、術後の癒着形成を抑制して患者のQOL(Quality of Life)を改善し、術後合併症の発生頻度を軽減するなど、医療分野への貢献を見据えるものである。
・氏 名:村松和明(ムラマツカズアキ)
・略 歴:2003年博士(工学)取得(徳島大学)
2005年東京電機大学理工学部講師
2008年東京電機大学理工学部准教授
2013年東京電機大学理工学部教授
・専門分野:組織工学、生化学、生体材料学
・学会活動等:日本生化学会、日本再生医療学会、日本炎症・再生医学会、
日本バイオマテリアル学会、日本生物工学会
・研究室:東京電機大学 生体組織工学研究室
*公式ホームページ http://b.dendai.ac.jp/~tissue/
*日本医療研究開発機構(AMED) 公式ホームページ
https://www.amed.go.jp/
*慶應義塾大学拠点(慶應義塾大学 臨床研究推進センター 公式ホームページ)
https://www.ctr.hosp.keio.ac.jp/
●東京電機大学は「首都圏ARコンソーシアム」に参画
本学は、慶應義塾大学病院が代表機関として2017年1月に発足した「首都圏ARコンソーシアム(MARC)」の連携協力機関として、2019年12月より参画しています。この参画を通じて、本学は同コンソーシアムにおける臨床研究の体制強化に協力するとともに、生体医工学分野の研究を推進する大学機関として積極的にAMEDの課題採択を目指し、また臨床研究・治験などにも活用することにより、研究・成果のスピードアップと実用化を促進しています。
*首都圏ARコンソーシアム(MARC) 公式ホームページ
https://marc-med.org/
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